Snoezelenとは

スヌーズレンは、オランダで1970年代に始められた障がいを持つ人との関わり合い(relationship)の理念です。 

 スヌーズレンは、オランダのエーデという町にある知的障害を持つ人々が住む施設、ハルテンベルグセンターで生まれた活動とその理念を言います。創始者は、アド・フェルフールさんです。1970年代の半ばからアドさんや近隣の施設でのアイデアや活動から始まりました。

 スヌーズレンの語源は2つのオランダ語、スニッフレン<クンクンとあたりを探索する>、ドゥースレン<ウトウトくつろぐ>から造られた造語であり、「自由に探索したり、くつろぐ」様子を表しています。どんなに障害が重い人たちでも楽しめるように、光、音、におい、振動、温度、触覚の素材、こんなものを組み合わせた感覚を重視した部屋が生まれました。出来上がった部屋は、障害を持つ人のみならず、その傍らにいる、介助者にとっても心地いい空間となりました。

 スヌーズレンは、治療法でも、教育法でもありません。パートナーは、治療効果や発達支援を一方的に求めることはせず、障がいを持つ人のオープンゴールな楽しみ方をありのままに受け入れ、一緒に楽しみます。それは、障がいを持つ人が、自分で選択し、自分のペースで楽しむための、人生の大切な時間なのです。そして共に過ごす人との相互作用により、孤独ではない社会的な存在としての時間なのです。スヌーズレンを実践する上で、大切なことは、障がいを持つ人とパートナーが、同じ人間として同じ場で同じ感覚を経験し、互いの感じ方や喜びを共有すること、それを通して人と人との関係をより深めることです。

 今では、重い知的障害を持つ人々の分野だけではなく、様々な分野へと広がっています。そしてヨーロッパ本土、イギリス、アジア各国、アメリカ、カナダ、世界中の国々にも広く理念と活動が浸透していきました。特にヨーロッパでは、認知症を持つ老人、精神障害を持つ人々、小児病院、普通幼稚園、町のコミュニティセンターなどにも広がり、あらゆる人が利用し、心地よい時間を過ごす場と認知されるようになってきているのです。ここ日本でも急速な広がりを見せています。


日本のスヌーズレン実践者へのアドバイス

 私が思うには、スヌーズレンでもっとも重要なことの一つは重度障害者の世界を理解すること、つまり、どのように彼らが物事を捉え、どのように彼らが彼ら自身の世界を見出すのか、ということを理解することの困難さです。なぜなら、私たちは私たち自身の世界にとらわれているからなのですね。

 スヌーズレンにおける基本の一つとして、時間をかける、ということが挙げられます。手を出さず十分に時間をかけてゆっくりと彼らを観察し、彼らがあなた方の手助けなしに何をしているのか、ということをまず見るのです。若干の手助けはいいのですが、支えや助けを急ぎすぎてはいけません。彼らに自分で自分の世界を見出させてください。スヌーズレンルームにおいて、このことはとても重要なメインテーマです。

 一般的に、私たちがスヌーズレンで活動するとき、私たちは私たち自身のことについて知ることになります。なぜなら、私たちは椅子やテーブルなど身の回りのありふれた要素に慣れてしまっていますが、重度障害者にとって椅子はありふれたものではなく、スヌーズレンルームでは私たちはいつもとは違うふうに椅子を使わなくてはならないからです。私たちが彼らの世界について学ばなくてはならないのです。

 日本スヌーズレン協会顧問・スヌーズレン共同創始者

                    アド・フェルフール